PCエンジン

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PCエンジンとは、ハドソンNECが共同開発した家庭用ゲーム機で、1987年10月30日に日本電気ホームエレクトロニクス(NECホームエレクトロニクス)から発売された「HE-SYSTEM規格」に基づくコンシューマ用ビデオゲーム機である。

当時のメーカー希望小売価格は24,800円。広義ではHE-SYSTEM対応マシンの総称、狭義では初代機、通称「白エンジン」を指す。

北米市場ではTurboGrafx-16(ターボグラフィックス16)の商品名で発売された。

概要[編集 | ソースを編集]

PCエンジンとは名器である。

ファミコンのライバルに始まり、8ビット機でありながらCD-ROM2アーケードカードなどで延命をはかりプレイステーション2の時代まで戦い続けたという家庭用ゲーム機史上でも類を見ない長寿ハードである。

後継機種「PC-FX」は壮大な爆死を遂げ、PCエンジンの名前にあやかったグラフィックボードPC 3DEngine」は存在したことすら誰も覚えていない。

レトロゲームの世界では今なおPCエンジンとメガドライブを巡る紛争が続いている。

ハードウェア[編集 | ソースを編集]

当時市場で圧倒的シェアを得ていた任天堂ファミリーコンピュータの次世代機を狙い登場したゲーム機のひとつ。同時期において任天堂に対抗できた数少ない成功したゲーム機の一つである。ハードウェアは実質ハドソンが開発したものである。

CPU6502カスタムを使用し、強力なグラフィック、スプライト機能を持った「HuC62」チップセットを採用している。CPUは8ビットだが、グラフィック周りなど一部の処理は実際に16ビットである。メモリDRAMではなく、CPUキャッシュメモリなどに使用される高速で非常に高価なSRAMが搭載されていた。8ビット機ながら高速なプロセッサ、高速メモリアクセスなど洗練された設計思想により、後発の16ビット機と比べても遜色のない高速処理を実現している。

シューティングゲームやアクションゲームなどの二次元処理のゲームではバックグラウンド枚数の制約上苦手であった二重スクロール等の表現を、ラスタースクロール+スプライトDMAによるキャラクタ書き換え等のプログラムの工夫により、擬似的ながらも見事再現していたゲームもあった。

ソフトウェア[編集 | ソースを編集]

ソフトウェアは、当初「HuCARD」(ヒューカード)と呼ばれるICカード型のROMで提供されていたが、その後CD-ROMCD-ROM²システム)に提供媒体が移行していった。なお、PCエンジンCD-ROM²システムは、パーソナルコンピュータも含めた世界で初めてとなるCD-ROMを媒体として採用した家庭用ゲーム機でありコンピュータでもある。

セーブデータのバックアップ方法として外部記憶ユニットを採用し、拡張端子で接続できるようにすることで、ファミコンなどで広く採用されていたカートリッジ内蔵式のバッテリーバックアップと比べて大きな容量を確保することを可能にし、また複数タイトルのデータを1台のユニットで管理出来るようにしている。ただし、最初期は外部記憶ユニットが発売されなかったため、RPGを中心にパスワード式を採用したタイトルも存在した。

NECホームエレクトロニクスは、元々ハードウェア製造メーカーであるため、同業他社である任天堂セガのようにハードソフト両方を自社開発することができない。このため初期ソフトのラインナップの開発はハドソンがその役目を果たした。初代プレイステーションも似たようなシチュエーションではあったが、ソニー・コンピュータエンタテインメントは同グループ系列にある音楽・映画部門のノウハウを生かし、割と早期に問題を解決する。一方のNECホームエレクトロニクスにはそのようなグループが無かったため、PCエンジン発売の同年にゲームソフト開発・音楽ソフト開発会社であるNECアベニューを設立させた。自社グループによるソフト開発・発売はハード発売から約1年の時間を要した。

仕様[編集 | ソースを編集]

  • CPU+音源:6502カスタムの「HuC6280」
    • クロック:1.79MHz/7.16MHz (ソフトウェアで選択可能)
    • 音源:波形メモリ6音~波形メモリ4音+ノイズ2音
      さらにCD-ROM²のインターフェースユニットを増設するとADPCMも追加されるが、本体のみでもCPUパワーを活かし、ソフトウェア処理でサンプリングを実現していたゲームも多い。その場合はもちろん波形メモリの発音数が減る(波形メモリ4音+ノイズ1音+サンプリング1音、など)。
  • VDC:HuC6270
  • VCE:HuC6260
  • メインRAM:8KB
  • VRAM:64KB
    • 表示画素数:336 x 224 (最大512 x 224) 内部は縦240
      横方向の画素数は3種類(256,336,512)から自在に選択して切り替えることができる。このおかげでシューティングゲームではアーケードの雰囲気に似せた「縦画面モード」をオプションや裏技で選択できたゲームも多い。
      なお、最大画素数の512 x 224はHuCARDのTVスポーツバスケットボール(選手選択画面)や、CD-ROM²のシャーロックホームズ(全編),シャドウオブザビースト(OPデモ)で使われている。VDC(HuC6270)が16ビットのレジスタを持っているため、横512の座標も通常と同様に問題なく扱うことができる。キャラクタ単位ではなく画素単位で制作したグラフィックを512 x 224画素目一杯に表現することにおいては、VRAMの容量が不足していたが、8 x 8画素のキャラクタを並べて画面を作る「BG画面」形式だったため、少ない容量のVRAMでも高解像度表示が可能だった。この高解像度を利用しているソフトが多くない理由は、VRAM容量の不足から画素単位で制作したグラフィックをフル画面表示しづらいことや、キャラクタが小さくスプライトが複数並び易い状況になるために、横並び制限でのスプライト欠けが生じ易いことなどが挙げられる。
  • 同時発色数:最大512色(BG:8×8ドット内256色中16色 スプライト16×16ドット内256色中16色)
  • スプライト:最大64個(1つのスプライトの最大は32x64)
  • バックグラウンド:1面

その他[編集 | ソースを編集]

  • 北米の市場に販売された際にはTurboGrafx-16(HES-TGX-01 1989年9月発売)と命名された。日本国内版のCD-ROM²にあたるTurboGrafx-CD(HES-CDR-01 TurboGrafx-16と同時発売)やPCエンジンGTと同機能のTurboExpress(HES-EXP-01 1990年11月発売)、PCエンジンDuoと同機能のTurboDuo(HES-DUO-01 1992年10月発売)なども発売された。なお、HuCARDのピン配列が日本国内版のPCエンジンより変更されており、HuCARD供給のソフトの互換性はないが、このピン配列の差異を吸収するスロットとコネクタを介すれば動作した。しかし後にコントローラー向けなどに使用されていた入出力ポートの仕様を変更し、一部をリージョンプロテクト用として転用することで対抗した。但し、CD-ROMメディアのソフトに関しては技術的問題から上記の手段によるリージョンプロテクトの実装が不可能の為、日本国内向け本体、海外向け本体で相互に使用可能である。
  • 上記TurboGrafx-16は、当時のライバル機種であったメガドライブおよびスーパーファミコンが搭載していた16ビットCPUの話題性に対抗するためにこの様なネーミングとなった。また、PCエンジンは画像処理周りなど一部の処理が16ビットで行っていたためでもある。
  • HuC62の名前の由来はハドソン社長の趣味の蒸気機関車、通称シロクニと呼ばれた"C62"による。命名の理由はハドソンの項目参照。
  • 発売当時もっとも普及していた家庭用ゲーム機であるファミリーコンピュータを大きく上回る性能を持っていたため、性能的にファミリーコンピュータへの移植が難しかった多くのアーケードゲームが発売された。また、当初はコア構想という独自の拡張思想を持ち、その名が表すようにPCのような役割を持たせようとしていた。
  • ゲームデータの外部メモリへの保存や、複数の別売のコントローラを接続し、最大5人までの同時プレイを可能としたマルチタップを初めて導入するなど、今日のゲーム機では当たり前となっている機構を世界で初めて採用していた。
  • 1994年、後継機である32ビットゲーム機・PC-FXが登場したが、PCエンジンとの互換性はない。
  • 1996年創刊の雑誌『ユーズド・ゲームズ』(現・『GAME SIDE』)では、PCエンジンの熱狂的なユーザのことを「PCエンジニア」と呼んでいた。この言葉は同誌2号のメガドライブ特集記事で誕生したものである。
  • PC-88VAのOSを「PC-Engine」と呼ぶが、PCエンジンとの関係はない。
  • PCエンジンという商標名はハドソン及びNECビックローブの登録商標となっている。

本体(発売順)[編集 | ソースを編集]

  • PCエンジン (PI-TG001) 1987年10月発売 メーカー希望小売価格 24,800円
    通称白エンジン
  • PC-KD863G メーカー希望小売価格 138,000円
    HE-SYSTEMをCRTディスプレイに内蔵させたもの。シャープの「ファミコンテレビC1」のパクリ商品であるが、一般家庭とPCは無縁の時代であったため壮大にコケた。
  • X1 twin (CZ-830C 発売元はシャープ) メーカー希望小売価格 99,800円
    HE-SYSTEMをシャープが開発していたパソコンX1に内蔵させたもの。
  • PCエンジンシャトル (PI-TG5) 1989年11月発売 メーカー希望小売価格 18,800円
    拡張バス等一部機構を省く事により低価格化がはかられたもの。低年齢層を狙い宇宙船を模したデザインである。テレビとの接続方式はRF出力からAV出力へと変更された。
  • PCエンジンコアグラフィックス (PI-TG3) 1989年12月発売 メーカー希望小売価格 24,800円
    初代からのマイナーチェンジ版。デザインが一部改良され、カラーリングを暗灰色に変更しただけでなく、テレビとの接続方式を従来のRF出力からAV出力に変更、付属コントローラに自動連射機構が内蔵された。
  • PCエンジンスーパーグラフィックス(PI-TG4) 1989年12月発売 メーカー希望小売価格 39,800円
    GPUを2つ搭載して、表示能力を2倍にした上位機種。NVIDIA SLIAMD CrossFireと同じ発想の画期的な実装を1980年台に実現していたものであったが、専用ソフトはほとんど発売されず、ほどなく市場から姿を消した。
  • PCエンジンGT (PI-TG6) 1990年12月発売 メーカー希望小売価格 44,800円
    ゲームボーイ似のポータブル機。ゲームボーイとは異なり、PCエンジン用のソフトをそのままプレイ出来る。COMケーブル(PI-AN4 1990年12月発売 メーカー希望小売価格 1,800円)と呼ばれる通信ケーブルでPCエンジンGT同士を接続することでの対戦機能も準備されていたが、対応ソフトは少なかった。
    専用テレビチューナー(PI-AD11、1990年12月発売 メーカー希望小売価格14,800円)を接続することでテレビの視聴が可能。
    なお、PCエンジンGTは世界で初めて据え置き型ゲーム機との互換性が図られた携帯型ゲーム機でもある。
  • PCエンジンコアグラフィックスⅡ (PI-TG7) 1991年6月発売 メーカー希望小売価格 19,800円
    コアグラフィックスからのマイナーチェンジ版であり、デザイン・カラーリングが再度変更された。基本的な仕様は全く同じである。低価格化され、これによりシャトルは消滅。二本立てのラインナップは再度一本化された。
  • PCエンジンDuo (PI-TG8) 1991年9月発売 メーカー希望小売価格 59,800円
    SUPER CD-ROM²との一体型。シャトル以外の機種に搭載されていた拡張バスが廃止され、これによりコア構想は終焉を迎えた。通産省選定グッドデザイン商品。第7回デザイン・オブ・ザ・イヤー受賞。
  • PCエンジンLT (PI-TG9) 1991年12月発売 メーカー希望小売価格 99,800円
    従来のPCエンジンと同様の筐体に、開閉式の液晶モニター、スピーカー、TVチューナー、コントローラー等を内蔵し、なおかつ従来機同等の拡張性を持たせた、当時としては極めて特異な設計であった。しかしその仕様からも推測出来る通り、非常に高価な機種となった。
  • PCエンジンDuo-R (PI-TG10) 1993年3月発売 メーカー希望小売価格 39,800円
    PCエンジンDuoよりヘッドホン端子やバッテリー端子等を省いて低価格化したもの。基本的な仕様は変わっていない。同梱コントローラーが本体にあわせ白色に、また連射機能が加えられている。
  • レーザーアクティブ (PCE-LD1) メーカー希望小売価格 89,800円
    パイオニア製レーザーアクティブのOEM。
  • PC Engine Pack (PCE-LP1) メーカー希望小売価格 39,800円
    PCE-LD1のオプション。この機器をPCE-LD1に搭載することでHuCARD、CD-ROM²、SUPER CD-ROM²、アーケードカード専用CD-ROM²、LD-ROM²メディアのソフトがプレイ可能(CD-ROMメディアソフトの一部はプレイ不可)。専用カラーリングの連射機能付きコントロールパッド同梱。

LD-ROM2対応レーザーアクティブプレーヤー

  • PCエンジンDuo-RX (PCE-DUORX) メーカー希望小売価格 29,800円
    Duo-Rのマイナーチェンジ版。さらなる低価格化の上、本体のカラーリングの一部変更と同梱コントロールパッドを6ボタン仕様に変更したもの。

各種ソフトを遊ぶために必要な環境[編集 | ソースを編集]

一般に多く流通したソフトを遊ぶにはSUPER CD-ROM²が可動する環境があれば良いが、本体、周辺機器共に多くのバリエーションが存在するため、システムの組み合わせパターンは膨大になり注意が必要である。分類すると下記のようになる。なお、下記において初代機、PCエンジンコアグラフィックスPCエンジンコアグラフィックスIIを合わせ「コアマシン」と称する。

  • 発売されたソフトの規格
    • 動作可能な本体、ハード、システムの組み合わせ
  • HuCARD
    • 全PCエンジンハード
  • HuCARD(PCエンジンスーパーグラフィックス専用)
    • PCエンジンスーパーグラフィックスのみ
  • CD-ROM²
    • コアマシン + CD-ROM² + 各種システムカード
    • コアマシン + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + ROM² Adapter + CD-ROM² + 各種システムカード
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンLT + SUPER ROM² ADAPTER + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンDuo系列機(R・RXを含む。以下同様)
  • SUPER CD-ROM²
    • コアマシン + CD-ROM² + システムカードVer.3.00(SUPER SYSTEM CARD) or アーケードカードPRO
    • コアマシン + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + ROM² Adapter + CD-ROM² + システムカードVer.3.00(SUPER SYSTEM CARD)or アーケードカードPRO
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンLT + SUPER ROM² ADAPTER + SUPER CD-ROM²
    • PCエンジンDuo系列機
  • アーケードカード専用CD-ROM
    • コアマシン + CD-ROM² + アーケードカードPRO
    • コアマシン + SUPER CD-ROM² + アーケードカードDUO or アーケードカードPRO
    • 以下も含め、SUPER CD-ROM²上(Duo系列機含む)でのアーケードカードPROの使用は公式にはサポート外
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + ROM² Adapter + CD-ROM² + アーケードカードPRO
    • PCエンジンスーパーグラフィックス + SUPER CD-ROM² + アーケードカードDUO or アーケードカードPRO
    • PCエンジンLT + SUPER ROM² ADAPTER + SUPER CD-ROM² + アーケードカードDUO or アーケードカードPRO
    • PCエンジンDuo系列機 + アーケードカードDUO or アーケードカードPRO

周辺機器[編集 | ソースを編集]

コア構想を標榜して販売されたPCエンジンは、逆に言えば単体ではゲームを遊ぶための最小限の機能しかなかった。それゆえ、純正の周辺機器は非常に多岐に渡って発売されたが、その多くはゲームと無関係で需要が少なく、価格が非常に高い企画先行の商品が多かった。ゲームに関係のあるものでもサードパーティー製のもののほうが安く流通量が多いため買いやすいという状況が目立った。また、本体の種類が多く、仕様も頻繁に変更されるので、その度に変換アダプターや仕様変更などで対応するという、泥縄的な展開が多かった。

CD-ROM[編集 | ソースを編集]

システムカード[編集 | ソースを編集]

セーブシステム[編集 | ソースを編集]

映像/音声出力[編集 | ソースを編集]

コントローラ拡張[編集 | ソースを編集]

その他オプション[編集 | ソースを編集]

グラフィック[編集 | ソースを編集]

通信装置[編集 | ソースを編集]

カラオケ装置[編集 | ソースを編集]

カラオケソフト:NECアベニュー
カラオケソフト:ビクター

追記[編集 | ソースを編集]

PCエンジン各機種、各外部機器に同梱された純正AVケーブルの純正RCAピンプラグは非常にもろい構造をしており、RCAジャックとの脱着を繰り返すうちに必ず内部断線を起こす欠陥があった。これを避ける為に、メガドライブやネオジオのモノラルAVケーブルを流用していたユーザーも居た。この点は何故か最後まで改善されることはなかった。

初代PCエンジン、PCエンジンコアグラフィックス、PCエンジンスーパーグラフィックス、PCエンジンコアグラフィックスIIの背面にある専用拡張端子にはRGB映像信号が出力されている。電波新聞社よりこの端子からRGB信号を取り出すコネクターの発売が予定されていたが結局発売されなかった。

追記2[編集 | ソースを編集]

NECホームエレクトロニクスの閉鎖に伴い同社の特許や商標は「ビッグローブ」に集約されていた。 そのビッグローブもNECからKDDIに売却された。またハドソンコナミに買収された。

この版権の複雑さから最近話題の「ミニファミコン」「メガドライブミニ」などに類似した製品は難しいとの見方が強かったが、2019年7月12日にPCエンジン miniが発表された。

関連項目[編集 | ソースを編集]