3Dプリンター銃製造事件

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3Dプリンター銃製造事件(3Dプリンターじゅうせいぞうじけん)とは、3Dプリンターによって銃を製造したために引き起こされた事件のこと。

概要[編集]

3Dプリンター自体は20世紀から自動車業界などの工業分野において試作品をつくるために使われてきていたが、2010年代に入ると個人でも買えるほど低価格化が進み家電量販店で売られるようになったため、広く一般に出回るようになった。これまでの法規制は、「物」は有体物、3Dデータの様な「情報」は有体物ではないものの典型として明確に分けて規定し、有体物としての銃火器の製造・所持・流通を取り締まるものであったが、技術の進化で両者の境目が曖昧になってきたため、このような事件が発生するようになった。

それまでにも、部品の一部を3Dプリンターで製造した銃火器は作られていたが[1]、2013年にUSAのDefense Distributedという団体により、Liberatorという世界初の全部品が3Dプリンターによって製造可能な拳銃のデータが公表された。これを受け、国務省は同団体に、銃火器の輸出規制を規定したInternational Traffic in Arms Regulationsに違反するおそれがあるとして設計図の公開を行わないように通達を行なっている[2]

USAのフィラデルフィアでは、2013年末に、3Dプリンターを用いた銃の製造に対する規制が始まったが、2014年の段階ではまだ3Dプリンターによる銃火器製造を受けた法改正はほとんどの国で行われていない[3]

そもそも、樹脂で造った銃そのものが使用者にとって危険であり、その観点からも規制が望まれている[4]が、Liberator公開直後から他にも同様の設計ファイル公開が相次ぎ、当初は単発しか発射できなかった3Dプリンタ製銃火器も、すぐに複数発発射が可能な改良版が登場するなど、どんどん進化を遂げている[5]

事件[編集]

日本では、2014年5月8日に、大学職員が銃刀法違反で逮捕されたという事件が発生した。これは3Dプリンターを使用して製作された銃に殺傷能力があったためで、3Dプリンターで製作した銃に銃刀法違反が適用されたのはこの事件が初めてである[6]

この事件を受けて、2014年5月9日、茂木経済産業相は「銃砲の製造は、既に武器等製造法の規制の対象となっており、現時点において、追加的な規制をすることは考えていないが、不当な用途へ転用されることを防止するため、実態なども見極めつつ、関係省庁とも連携の上、検討してまいりたい」と既に規制対象であることを明言した[7]

国家公安委員会委員長古屋圭司はこの事件に対して、現行法上では対応できていない問題であり、今後は法制上の問題も含めて対応していく方針。警察庁によれば3Dプリンターというのは、法律では購入を規制されておらず、転売も行われていることから、利用者登録などにより所持者を特定するということは困難であるとのこと。

この事件において犯人は3Dプリンターだけで銃を製造したのではなく、七年半もの町工場での勤務経験を生かし、小型フライス盤や旋盤、バンドソーなど加工機械も駆使して銃を製作していた可能性が高いと見られる[8]

この事件で、規制の議論が銃だけでなく3Dプリンターにまで及んだことから、業界各社が集まって「3Dプリンター振興協議会」が設立された[9]

2014年10月20日、横浜地裁にて懲役2年の実刑判決が言い渡された[10]

議論[編集]

3Dプリンタ製銃火器の危険性に対しては、「簡単かつ安価に銃火器が出まわるから規制せよ」との声が大きい一方、様々な反論がある。

弾薬を3Dプリンタで製造できないという事実は多く指摘されており、3Dデータを活用する会「3D-GAN」の相馬達也は「一貫して言っていることですが、3Dプリンタで銃を作ることはできます。ですが、他の製造法に比べて著しく有利だということはないので、社会的脅威にはなり得ません。弾薬が手に入るのなら、もっと有利な銃の製造法は他にたくさんありますから、3Dプリンタの所持を規制する必要も意味もありません。」と、3Dプリンタで銃火器をつくること自体の優位性を否定している[8]

また、Defense Distributedの開発責任者コーディー・ウィルソン(Cody Wilson)テンプレート:Refnestは、「権利(武装権)を乱用して人に危害を加える可能性は、誰にでもあるという事実と向き合いたくないだけだ。危害を及ぼす可能性の有無にかかわらず、与えられている権利は守られるべきだというのが、我々の立場だ。さらに言えば、危害を受ける可能性があるからこそ、権利は保障されるべきだと思う」と武装権を根拠に反論している[11]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 杉光一成 「論点」 『読売新聞』 2014年5月21日 15頁左上