「Turbo Pascal」の版間の差分

提供: MonoBook
ナビゲーションに移動 検索に移動
imported>Administrator
imported>Fallout New Tokyo
 
(4人の利用者による、間の7版が非表示)
1行目: 1行目:
'''Turbo Pascal'''(ターボ パスカル)は、[[ボーランド]]が発売していた[[Pascal]][[統合開発環境]]である。[[エディタ]]、[[コンパイラ]]、[[リンカ]]を統合した[[パソコン]]向け統合開発環境の最も初期の製品のひとつである。
+
'''Turbo Pascal'''(読み:たーぼぱすかる)とは、[[ボーランド]]が発売していた[[Pascal]]に強く影響を受けた[[プログラミング言語]]および[[統合開発環境]]である。
 +
 
 +
== 概要 ==
 +
Turbo Pascalは、[[エディタ]]、[[コンパイラ]]、[[リンカ]]を統合した[[パソコン]]向け[[統合開発環境]]のなかでも初期の製品のひとつである。
 +
 
 +
なお、[[プログラミング言語]]としては純粋な[[Pascal]]実装ではなく、あくまでも「Turbo Pascal」というPascalから派生した独自言語である。関係としては[[Python]]と[[Boo言語]]のようなものである。
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
スイスのチューリッヒ工科大学で[[Pascal]]の創始者である[[ニクラウス・ヴィルト]]のもとで学んだ[[フィリップ・カーン]]が、その素晴らしさを[[アンダース・ヘルスバーグ]]に説き、若干PascalっぽくないTurbo Pascalなるプログラミング言語を開発したとされる。
+
スイスのチューリッヒ工科大学で[[Pascal]]の創始者である[[ニクラウス・ヴィルト]]のもとで学んだ[[フィリップ・カーン]]が、その素晴らしさを友人の[[アンダース・ヘルスバーグ]]に説くという伝言ゲームのすえ、若干[[Pascal]]っぽくないTurbo Pascalなる[[プログラミング言語]]が開発されたとされる。
 +
 
 +
Turbo Pascalの開発者である[[アンダース・ヘルスバーグ]]はインタビューに対し、デンマークで開発を行い、アメリカへ渡った[[フィリップ・カーン]]のもとへ定期的に郵送で[[プログラム]]を送っていたと答えている。この時点でフィリップ・カーンは不法滞在であったが[[ボーランド]]社を名乗りTurbo Pascalを売り歩いた。その後、Turbo Pascalのバカ売れ成功をうけ、本物の[[ボーランド・インターナショナル]]社を米国にて設立した。
  
Turbo Pascalの開発者である[[アンダース・ヘルスバーグ]]はインタビューに対し、デンマークで開発を行い、アメリカへ渡った[[フィリップ・カーン]]のもとへ定期的に郵送でプログラムを送っていたと答えている。この時点でフィリップ・カーンは不法滞在であったがボーランド社を名乗りTurbo Pascalを売り歩いた。その後、Turbo Pascalのバカ売れ成功をうけ、本物のボーランド・インターナショナル社を米国にて設立した。
+
1983年11月に最初のバージョンとなる[[Turbo Pascal 1.0]]が[[CP/M]]および[[MS-DOS]]向けに販売開始されたのを皮切りに、定期的なバージョンアップを繰り返し、その後には[[Windows]]版や[[Mac]]版も販売された。なお1985年に発売された[[Macintosh]]版は長くはサポートされなかった。また[[Kylix]]という製品名で[[Linux]]でも発売した。
  
1983年11月、[[CP/M]][[MS-DOS]]版が販売開始され、その後[[Windows]]版も販売された。1985年には[[Macintosh]]版も販売されたが長くはサポートされなかった。
+
=== [[Turbo Pascal 1.0]] ===
 +
[[Turbo Pascal 1.0]]は、1983年11月20日に発売されたTurbo Pascalシリーズで一番最初のバージョンである。
  
=== Turbo Pascal 5.5 ===
+
詳細は「[[Turbo Pascal 1.0]]」の項目を参照。
[[Turbo Pascal 5.5]]」の項目を参照。
+
 
 +
=== [[Turbo Pascal 5.5]] ===
 +
詳細は「[[Turbo Pascal 5.5]]」の項目を参照。
  
 
== 概要 ==
 
== 概要 ==
個人で買えるほどの安い価格、[[アセンブラ]]で記述され、全ての動作を[[RAM]]内で行う高速な[[コンパイラ]]、フルスクリーンエディタを含む使いやすい[[統合開発環境]]は大きな衝撃を与えた。当時のメジャーなフルスクリーンエディタWordStarの編集操作用キーボードショートカットを、そのまま利用できたのも魅力であった。
+
個人で買えるほどの安い価格、[[アセンブラ]]で記述され全ての動作を[[RAM]]内で行う高速な[[コンパイラ]]、[[スクリーンエディタ]]を含む使いやすい[[統合開発環境]]は大きな衝撃を与えた。当時のメジャーな[[スクリーンエディタ]]であった[[WordStar]]の編集操作用[[キーボードショートカット]]をそのまま利用できたのも魅力であった。
  
バージョン4からは、[[Modula-2]]で実現された特徴のいくつかを[[Pascal]]に取り込み、ソフトウェアパーツのユニット化(分割コンパイル)や[[インラインアセンブラ]]の利用、[[ハードウェア]]への低レベルアクセス([[メモリ]]、[[I/Oポート]]直接アクセス、[[割り込み処理]]の実装)を可能にし、通常のPascalは守備範囲としていないハードウェア制御やグラフィック等を含むより実践的なソフトウェア開発が可能になった点などをあげることができる。バージョン5.5からオブジェクト指向機能を持つまでに拡張された。
+
バージョン4からは[[Modula-2]]で実現された特徴のいくつかを[[Pascal]]に取り込み、ソフトウェアパーツのユニット化(分割コンパイル)や[[インラインアセンブラ]]の利用、[[ハードウェア]]への低レベルアクセス([[メモリ]]、[[I/Oポート]]直接アクセス、[[割り込み処理]]の実装)を可能にし、通常のPascalは守備範囲としていないハードウェア制御やグラフィック等を含むより実践的なソフトウェア開発が可能になった点などをあげることができる。さらにバージョン5.5では[[オブジェクト指向]]機能を持つまでに拡張された。
  
 
[[Delphi]]および[[C Sharp|C#]]は、Turbo Pascalの後継ソフトウェアである。Turbo PascalとDelphi、C#の言語仕様は[[インテル]]系パーソナルコンピュータ上での[[ALGOL]]系言語では[[デファクトスタンダード]]に近い存在となり、他のベンダからも(ソースレベルでの)Turbo PascalないしDelphi互換をうたう統合開発環境が数多く登場した。
 
[[Delphi]]および[[C Sharp|C#]]は、Turbo Pascalの後継ソフトウェアである。Turbo PascalとDelphi、C#の言語仕様は[[インテル]]系パーソナルコンピュータ上での[[ALGOL]]系言語では[[デファクトスタンダード]]に近い存在となり、他のベンダからも(ソースレベルでの)Turbo PascalないしDelphi互換をうたう統合開発環境が数多く登場した。
25行目: 35行目:
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
 +
* [[Pascal]]
 
* [[Delphi]]
 
* [[Delphi]]
 
* [[C Sharp|C#]]
 
* [[C Sharp|C#]]
 +
* [[Cシャープ(音楽記号)]]
 +
* [[不完全にしておよそ正しくないプログラミング言語小史]]
 +
 
== 参考文献 ==
 
== 参考文献 ==
<references/>
+
{{reflist}}
== 外部リンク ==
 
  
 
{{stub}}
 
{{stub}}

2014年2月26日 (水) 00:57時点における最新版

Turbo Pascal(読み:たーぼぱすかる)とは、ボーランドが発売していたPascalに強く影響を受けたプログラミング言語および統合開発環境である。

概要[編集 | ソースを編集]

Turbo Pascalは、エディタコンパイラリンカを統合したパソコン向け統合開発環境のなかでも初期の製品のひとつである。

なお、プログラミング言語としては純粋なPascal実装ではなく、あくまでも「Turbo Pascal」というPascalから派生した独自言語である。関係としてはPythonBoo言語のようなものである。

歴史[編集 | ソースを編集]

スイスのチューリッヒ工科大学でPascalの創始者であるニクラウス・ヴィルトのもとで学んだフィリップ・カーンが、その素晴らしさを友人のアンダース・ヘルスバーグに説くという伝言ゲームのすえ、若干PascalっぽくないTurbo Pascalなるプログラミング言語が開発されたとされる。

Turbo Pascalの開発者であるアンダース・ヘルスバーグはインタビューに対し、デンマークで開発を行い、アメリカへ渡ったフィリップ・カーンのもとへ定期的に郵送でプログラムを送っていたと答えている。この時点でフィリップ・カーンは不法滞在であったがボーランド社を名乗りTurbo Pascalを売り歩いた。その後、Turbo Pascalのバカ売れ成功をうけ、本物のボーランド・インターナショナル社を米国にて設立した。

1983年11月に最初のバージョンとなるTurbo Pascal 1.0CP/MおよびMS-DOS向けに販売開始されたのを皮切りに、定期的なバージョンアップを繰り返し、その後にはWindows版やMac版も販売された。なお1985年に発売されたMacintosh版は長くはサポートされなかった。またKylixという製品名でLinuxでも発売した。

Turbo Pascal 1.0[編集 | ソースを編集]

Turbo Pascal 1.0は、1983年11月20日に発売されたTurbo Pascalシリーズで一番最初のバージョンである。

詳細は「Turbo Pascal 1.0」の項目を参照。

Turbo Pascal 5.5[編集 | ソースを編集]

詳細は「Turbo Pascal 5.5」の項目を参照。

概要[編集 | ソースを編集]

個人で買えるほどの安い価格、アセンブラで記述され全ての動作をRAM内で行う高速なコンパイラスクリーンエディタを含む使いやすい統合開発環境は大きな衝撃を与えた。当時のメジャーなスクリーンエディタであったWordStarの編集操作用キーボードショートカットをそのまま利用できたのも魅力であった。

バージョン4からはModula-2で実現された特徴のいくつかをPascalに取り込み、ソフトウェアパーツのユニット化(分割コンパイル)やインラインアセンブラの利用、ハードウェアへの低レベルアクセス(メモリI/Oポート直接アクセス、割り込み処理の実装)を可能にし、通常のPascalは守備範囲としていないハードウェア制御やグラフィック等を含むより実践的なソフトウェア開発が可能になった点などをあげることができる。さらにバージョン5.5ではオブジェクト指向機能を持つまでに拡張された。

DelphiおよびC#は、Turbo Pascalの後継ソフトウェアである。Turbo PascalとDelphi、C#の言語仕様はインテル系パーソナルコンピュータ上でのALGOL系言語ではデファクトスタンダードに近い存在となり、他のベンダからも(ソースレベルでの)Turbo PascalないしDelphi互換をうたう統合開発環境が数多く登場した。

一方で、最適化の面ではワンパスコンパイラの限界に直面し、同じALGOL系各種言語を含む他の処理系に及ばない面もあったが、C#および.NET Frameworkへのバージョンアップに際し、事前の最適化コンパイルに加え、実行時に実行環境のリソースを調べ限界まで最適化を行うJITコンパイラを搭載することで、起動速度は遅くなったものの飛躍的な実行速度を手に入れている。

日本語版[編集 | ソースを編集]

日本語版のTurbo Pascalは、マイクロソフトウェアアソシエイツとサザンパシフィックの2社が独自に日本語化を行なっており販売価格も違っていた。最終的にはマイクロソフトウェアアソシエイツに一本化され、後にボーランドジャパン(マイクロソフトウェアアソシエイツとボーランドインターナショナルの共同出資;後のボーランド株式会社)から発売された。


関連項目[編集 | ソースを編集]

参考文献[編集 | ソースを編集]