System.Numerics.Vector<T>
System.Numerics.Vector<T>はSIMDレジスタを表す不変の構造体である。
こいつを使うと.NETのランタイムが上手いこと解釈してSIMDで加速される。
なお「SIMD演算器がある場合に」と注釈があり、加速されないこともあるようなことが書いてあるが、 Android最初期のT-01Cなどに搭載されたSnapdragon S1(QSD8250)ですらSIMD(NEON)を搭載しているわけで、 いまどきSIMDが搭載されていないCPUは存在するのか謎である。 というか、それより下のクラスの組み込み系CPUで.NETがまともに動くのか謎である。
Vector<T>はVector<T>.Countの大きさの配列のようなものである。 Vector<int>は「intが8個の配列」のような感じだ。
あとは普通に四則演算などをすると内部でベクトル演算が行われる。
var v1 = new Vector<int>(1,2,3,4,5,6,7,8);
var v2 = new Vector<int>(1,2,3,4,5,6,7,8);
// ベクトル演算が行われる
var v3 = v1 + v2;
// v3 = <2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16>
四則演算だけでなくVectorクラスにはMinやMaxやDotなども用意されている。
Vector<T>.Countプロパティ
1つのVector<T>構造体に格納可能な変数の数を得られる。 CPUのSIMDレジスタの幅だな。
// SIMDレジスタにintを格納できる数
var regs = Vector<int>.Count;
// intのビット数
var bits = sizeof(int) * 8;
// SIMDレジスタのビット数
var simd = bits * count;
Console.WriteLine($"{simd}bit = {bits}bit * {regs}unit");
// 256bit = 32bit * 8unit
Vector<T>のコンストラクタ
引数1つ指定するとVector<T>.Countの数だけ埋め尽くされる。
var v = new Vector<int>(1); // v = <1,1,1,1,1,1,1,1>;
引数に配列を指定するとVector<T>.Countの数だけ埋め尽くされる。
var v = new Vector<int>(new[]{1,2,3,4,5,6,7,8}); // v = <1,2,3,4,5,6,7,8>;
配列の要素数がVector<T>.Countより多いと、多い分は無視される。以下だと1から8までが格納される。
var v = new Vector<int>(new[]{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}); // v = <1,2,3,4,5,6,7,8>;
index引数を指定すると配列のその位置から格納される。以下だと3から10までが格納される。巨大な配列を逐次処理するのに便利だな。
var v = new Vector<int>(new[]{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}, index:2); v = <3,4,5,6,7,8,9,10>;
配列の要素数がVector<T>.Countより少ないと、System.IndexOutOfRangeExceptionを吐く。 巨大な配列をインデックス指定でぶん回す場合は配列の要素数がVector<T>.Countで割り切れるようにパディングするといいな。
var v = new Vector<int>(new[]{1,2,3,4,5,6,7}); // System.IndexOutOfRangeException